1960 年代にEMI が民生用として作った DLS529。
通称「アビーロード・スタジオモニター」なんて名前で呼ばれ、世界的に評価の高いモニタースピーカーです。
「アビーロード・スタジオモニター」と言っても、実際にアビーロード・スタジオで音楽制作に使われていた訳ではなく、当時のアビーロード・スタジオを経営していた EMI がアビーロード・スタジオで培った技術を投入し、あくまでも民生用スピ ーカーとして生まれてきたスピーカーです。
実際に使用されていたスピーカーは「 銀箱」と呼ばれる無骨なエンクロージャーに納まった Altec や PARMEKO が使われていたようです。
しかし、海外サイトでの情報で、このDLS529 が納入されたという事実はあるようで、どのような存在で使用されたかは当時のアビーロード・スタジオの関係者だけが知っている「謎」のようです。

パッシブラジエーターを採用したスピーカーシステム。
低域には25cm コーン型ウーファーLE10A と25cm コーン型パッシブラジエーターPR10 を搭載しています。
また、高域にはコーン型トゥイーターであるLE20 を搭載しています。
外観はウォルナット仕上げが施されています。

自然な音場再生を求めて設計されたフロア型スピーカーシステム。
左右の定位に加えて奥行きの方向定位の明確化を図った
PLUMB INLINE 方式を採用しています。
この方式では、コーンの形状や材質、取り付け位置の実験を積み重ね、総合的な判断からウーファーが前に出た独特なレイアウトを採用しています。これにより、各ユニットの音源位置をほぼ一直線に揃えています。
バッフルボードに反射した音が直接音と干渉し合い、特定の周波数に山や谷が生じたり、指向特性が鋭くなってしまうのを改善するため、AG ボード(Acoustical GroovedBoard) を採用しています。AG ボードでは、縦横溝が特定周波数でのエネルギーの強い反射波を分散させるディフューズ効果を果たしており、直接音との干渉を弱め、定位感を改善しています。
ミッドレンジとトゥイーターをできるだけ接近させるため、ユニットボードで一体化しています。これにより上下の指向特性を改善しています。
低域にはCARBOCON を用いた38cm コーン型ウーファーを搭載しています。
CARBOCON は、天然パルプ材に炭素繊維をバランスよく混抄・使用することにより、「剛性が強く、しかも共振鋭度が抑えられる」といった高性能化を実現しています。また、形状は使用帯域を考慮し、NASTRAN の振動解析を指針にヒヤリングテストを重ねた結果、半頂角60゜のストレートコーンとし、さらにコーンに同心円状のリブコルゲーションを施しています。
また、コーン紙とエッジの機械インピーダンスのマッチングをとり、エッジ部での反射を防ぐため、クロスエッジの上に特殊ダンプ剤が塗布されています。このダンプ剤は粘性が高いため、数回に分けた手作業によるはけ塗りを採用することで塗りムラを防いでいます。
さらに磁気回路には、中低域での分解能が優れたアルニコV 鋳造マグネットと電流歪の少ないFC 材ポールを使用しており、さらに振動方向に対し磁場が対称となるようにT 型ポールが採用されています。これによりリニアリティの向上と中域での電流歪の改善を実現しています。
フレームには、アルミ合金の特殊成型品を採用しています。
中域にはバランスドライブ型の10cm コーン型ミッドレンジを搭載しています。
バランスドライブ方式では、振動板に対するボイスコイルの位置に着目し、“スピーカーコーンの完成モーメントが駆動力源であるボイスコイルからみて内周側と外周側が均等条件になる”、
“ボイスコイル内外の重量配分が等しくなる”、“ボイスコイルから振動端への伝搬時間を短くすることができる” という3 つの考え方が盛込まれて設計されています。
また、磁気回路には大型フェライトマグネットを用いてギャップ近傍で磁束密度を飽和させて電流歪を減少させる方法が採用されています。さらに、ボイスコイルをリニアリティよく動作させるために、ウーファーと同じT 型ポールを採用し、磁束分布の均一化を図ってます。
高域にはバランスドライブ方式を採用した3.5cm コーン型トゥイーターを搭載しています。
振動板には、20μ厚のチタン箔を一体深絞りした振動板を採用しています。また、磁気回路にはアルニコV 鋳造マグネット、磁束漏れの少ない壺型ヨークを採用しています。
ネットワーク部のウーファー用のインダクターには線径
1.8mm の銅線を使用し、共振を抑えるために特殊樹脂で一体封入しています。さらに、芯材には大入力時の歪特性に優れたオリエントコア、コンデンサーには誘電体損失が少ないメタライズドポリエステル・フィルムコンデンサーをそれぞれ採用しています。これらの素子が相互誘導を起こさないように、エポキシ基板上に充分な距離をとって配置してます。
また、内部配線には、一本あたり55 芯の太い芯材を用い、さらに一芯ごとにウレタン被膜を施しています。これにより低直流抵抗で、高音域でもインピーダンスが上昇しないようにしています。
エンクロージャーのバッフルボードには、2 重構造の30mm厚硬質カラ松材のパーチクルボード、他の面には18mm 厚の高密度パーチクルボードを採用しています。また、振動板を分散させ、特定の板振動の周波数が重なり合うことを避けるような配慮がされています。